声優さんとして活動されている羽澄 愛さんをイメージした歌・動画を(勝手に)作り、なんと光栄なことに羽澄さんご本人にお歌を歌っていただき、その動画を羽澄さんのチャンネルで投稿いただきました。



歌詞はこちらです。

「つむぎうた」羽澄 愛
作詞・作曲・編曲:子記


昨日までの世界に 何もなかったこの場所に
あなたが描いた世界が色づき動き出す

それは それは 今は小さくても大きくて
いつか 誰かの世界 照らすのでしょう

もしもあなたが迷ったときには
わたしの声があなたに届くといいな、なんて
そんなこと思いながら今日も歌ってます


今日までの世界に 音のなかったこの場所に
わたしが紡いだ声が生命を与えれたら

それは それは 微かだとしても確かに
きっと  あなたの世界 震わすでしょう

そう願って

あなたの羽となり 澄んだ空の果てまでも
愛しさが響いて 世界を満たしていくように
そんな風になれたらなんて思っているのです


誰かが繋いだ思いが誰かをまた繋いでいく


もしもあなたが迷ったときには
わたしの声があなたに届くといいな

あなたが笑ったり泣いたりするときも
わたしの声があなたに寄り添えたなら…

いつかわたしがここから消えても
わたしの声はあなたに届くといいな、なんて
そんなこと思いながら今日も歌ってます


ずっと歌ってます




この動画観て! 歌聴いて! 以上!という感じなんですが、せっかくなので実際に今回の制作を担当された子記さんにインタビューをしてみたいと思います。何を言ってるんだと思ったみなさん、帰るなら今のうちですよ。



最初に声を聴いたとき、めちゃくちゃいいなって

ーーはじめまして。インタビューを担当させてもらう子記と申します。今日はよろしくお願いします。

子記(以下「子」):はじめまして。インタビューをしてもらう子記と申します。今日はよろしくお願いします。


ーーややこしいですね。

:ややこしいですね。


ーーとりあえずさっそく始めさせてもらいますが、子記さんは羽澄 愛さんの「つむぎうた」を作られたということで

:どうも……私が「つむぎうた」の創造者……子記です……。有難いお言葉をお告げします……。


ーーあ、そういうキャラでいくんですか?

:いえ、やめときます。


ーーそうですか。今回の「つむぎうた」はどういうきっかけで制作されたのでしょうか?

僕が羽澄さんのために曲を作りたい、と思って作って作りました。


ーー特に依頼とかではなく自発的に作られたんですね。そう思ったきっかけというのは何だったのでしょうか?

:元々は確か2019年の6月か7月頃、「空の詩」という曲を作っていたときに――この曲は「秒速5センチメートル」に出てくる澄田花苗さんをイメージした曲だったんですけどーー澄田さんが歌っている感じにしたいなということで女性ボーカルにしたいなと思っていました。それでこれにマッチする女性ボーカルを「うたいれ!」とか「ココナラ」で探していたときに羽澄さんを知ったんですね。最初に声を聴いたとき、めちゃくちゃいいなって。自分の曲歌ってもらえたらいいなって。


ーーなるほど。あれ? でも「空の詩」は最終的には羽澄さんじゃなくてほの香さんへ依頼してますよね?

:そうですね。個人的な好みとして元々「語りかける」ような歌い方が好きなんですけど、特に「空の詩」についてはそういう方向にしたいなと思っていろんな方を探す中で特に良いなと思ったのがほの香さんと羽澄さんで。

お二人ともそれぞれで違う魅力を持っていてどちらの「空の詩」も聴いてみたい、どちらにしようかと滅茶苦茶迷ったんですけど、よく見たら羽澄さんはそのとき歌の依頼は受け付けていないと書かれていたので、これもご縁ということでほの香さんに依頼させていただいて素敵な歌を入れていただきました。

ただ、羽澄さんにも何か別の曲でよりマッチしそうな曲作ることあったら依頼できたらいいかなあと思いこんなツイートをしたところ、羽澄さんご本人から返信をいただいたんですね。



ーー羽澄さんご本人からお声がけがあったのがきっかけになったと。

:そうですね。こうしてお声がけいただいたということ自体もそうなんですけど、こんなに魅力的な歌声なのに今は歌の依頼を積極的には受けていないというのは勿体ない!と思ったことや、歌の依頼を受けることに慎重になっているのは羽澄さんご自身の歌声を存分に活かせる歌(の依頼)にまだ出会っていないからなのかなとも思ったりして、それなら羽澄さんの歌声の魅力を存分に伝えられる曲を僕が作ってしまおう!と思うようになりました。


ーーなるほど、勝手に勘違いして一人で盛り上がってたんですね。

:黙れ。

仮タイトルは「宣伝のうた」でした

ーーそれではその頃からもう曲を作り始めていたのですか?

:このときは「空の詩」の制作をしていたということもあって「いつか作れたらいいなあ」という感じではあったのですが、ボイスメモを見る限りはこの翌日には既に「20190707デモ(羽澄さん童謡)」が存在していました。


ーーさっきのツイート(2019年7月6日)の翌日じゃないですか。

:そうですね。これはおそらく


この羽澄さんの「たなばたさま」を聴いてビビビッとインスピレーションが湧いたものと思われます。

ただ、このとき作った曲(といってもメロディーだけなんですが)は「つむぎうた」とは全然無関係で、その日もう1曲ボイスメモに記録されている「20190707デモ(羽澄さんバラード)」のほうが実は「つむぎうた」の原型となっています。


ーーそこで初めて「つむぎうた」が生まれたと。

:と言ってもこの時点のデモは最終的な「つむぎうた」の要素の1%もなくて、財津和夫さんの「切手のないおくりもの」に近い感じの曲でAメロぐらいしかありませんでした。


ーーパクリですか。

:違います。それが一カ月くらいのうちに徐々にサビまで出来てきて、でもそれも今の「つむぎうた」とは割と別物で、なんかLe Coupleの「ひだまりの詩」っぽいメロディーの曲でした。


ーーパクリですか。

:違います。ただ、メロは今とちょっと違うもののサビの「もしもあなたが迷ったときには」的な歌詞はあって、メロ的にもサビの終わりの部分だけ「つむぎうた」っぽい部分がようやく出てきたりしてました。


ーーそれらが今の「つむぎうた」に近い状態になったのはいつ頃なのでしょうか?

:明確にいつ頃かは覚えていないんですが、僕は基本的に歌詞とメロディーが同時進行で、方向性が見えたらそこから歌詞だけGoogleドライブでメモりながら脳内で曲を作り続けるモードに入るんですよね。なのでもうそうなったらボイスメモは残さないんですが、2019年8月を最後にこの曲に関するボイスメモは残していないので、もうある程度方向性は固まっていたと思います。テーマを決めてからは歌詞は割とさくっと書けて、歌詞が出来てしまえばメロディーは自然と付いてくるので割とすんなり出来たような気がします。なので、割と早いうちに近い状態になっていたかなと思います。


ーーただ、実際にトラック制作に着手されたのはそこから半年以上経ってからですよね?

:あ、そうですね。2019年8月半ばから「かぐや様は告らせたい~~天才たちの恋愛頭脳戦~」のイメージソングである「あまのかぐやさま」の制作に入っていたので、それがある程度落ち着くまでは具体的な作業としては止まってました。仮歌をどうしようかなと思っていた問題もあって、それがNEUTRINOのAIきりたん登場で解消したというのも制作再開のきっかけだったりしますけど。


ーーテーマ自体はどういう風に決められたのでしょうか?

:大元は前述のとおり羽澄さんの歌声の魅力を伝えられたというのがあって、そう考えたときに歌や声はテーマにしたいなと思いました。

あと、声優さんは同人でも事務所に所属されているようなプロの声優さんに依頼されているケースが結構多い印象だったのでそもそもプロの声優さん以外でも羽澄さんのような活動をされている方がいるということや、脚本とかを書かれて依頼されている方もいるということを知ったのも羽澄さんきっかけだったんですよね。

誰かが作った物語にそうしてまた誰かが手を差し伸べていこうとするという繋がりが凄くいいなと思って、それもテーマに入れました。


ーー声優という仕事やそれを取り巻く創作全般をテーマにしていると。

:そうですね。勿論プロのアニメスタッフが作ったものにプロの声優さんが命を吹き込むということも素晴らしいなと思うのでそれもテーマとして入っていますが、専業の声優さんのようにそれで食うための仕事としてやっているわけではない方同士だとよりそれに対する思いをより強く感じられることもあって、いいなと。


ーー素人モノが好きだと。

:否定はしません。元々プロにせよアマにせよ、何十年とか何百年とかの単位でこういったことがリレーのように繋がって繰り返されてきたのだろうなと思うんです。それは創作に限らないんでしょうけど。

僕自身もこうして勝手にイメージソングとかを作ったりしているのは、この作品や人物に凄く大きな影響を受けた人間が確かに生きていたんだ、言葉に出来ないこんな素晴らしい感情・感覚をもらえたんだということを今そして未来へーー自分の肉体がいなくなった後でもーー伝えるため……というような思いがあったりはします。

それで歌詞の内容としてもそういう風に誰かが何かに心動かされて自分も何かを作ろうとして、そうして作ったものがまた誰かに、たとえ一人だけだとしても影響を与えていくということをテーマに出来たらと思い作りました。それが僕が羽澄さんのために曲を作るということにも繋がっているし、その先にも繋がっていくだろう、繋がっていくといいな、と。


ーーそうして創作する人が増えれば羽澄さんへ依頼をする人も増えると。

:そうですね。なので、NEUTRINOのAIきりたんで仮歌を入れて羽澄さんへ最初に音源をお渡しした際の「つむぎうた」の仮タイトルは「宣伝のうた」でした。


ーーなんて下世話な……。


合唱曲ぽいピアノ伴奏でのソロボーカルアレンジしゅきぃ

ーー「つむぎうた」のアレンジは歌とピアノのみというかなりシンプルなアレンジですが、これはどのように決められたのでしょうか?

:まずは羽澄さんの歌声――可愛さ・優しさ・切なさが同居しているあたたかな歌声――を存分に味わえるというのが第一と考えたとき、楽器の数は一つまでにしようと思いました。


ーーそれはどういう理由からでしょうか?

:楽器が増えると羽澄さんの歌声の響きを損なってしまうことになるからです。声優さんとか歌手の方々の声って僕らが普段思っている以上にめちゃくちゃ魅力的な響きを持っているんですよ。それは楽器自体の音とかもそうなんですが、でもそれらがいろんな楽器とかと合わさると互いに良さを打ち消しあってその魅力が失われてしまうんですよ。


ーー帯域が競合しないように各パートの音をイコライザであえて削ったりしますしね。ただ、そうしたアンサンブルの魅力もあると思いますが?

:勿論、音が増えるとそれだけ音楽そのものとしてはリッチに魅力的になっていきますし、音楽としてはある程度パートが多いほうが基本的にはプラスマイナスではプラスのほうが大きいと思います。実際ソロのアカペラだけだと長時間聴いてはいられないですしね。

ただ、声優さんがしゃべっているときの身体の芯に響いてくるような響きや、アーティストの方がギターやピアノで弾き語りしてるときの重力がないみたいに声が伸びやかに飛んで響いていく感じ……ただ単純なコードをアルペジオを弾いてるだけで泣けてくるようなピアノの音色……この音としてのシンプルで強い「良さ」が味わえなくなるのも確かで、それは勿体ないなあとも思うのです。


ーー確かに音源をそのまま聴くのと実際にスタジオとかで生で聴いたときの感覚は結構違いますよね。

:そうなんですよ。特に羽澄さんの「具合が悪いと甘えてくる妹」とか聴いてると、この可愛さとか切なさとかあったかさとか息遣いとか、そういうものが楽器をドコドコ鳴らして損なわれてしまうのは兄としては赦せないじゃないですか。


ーー別に兄じゃないですけどね。

:そう日頃思っているということもあって、僕はこの曲では曲を引き立てる一つの道具として羽澄さんの声を使うのではなく、羽澄さんの歌声の魅力が第一に伝えられるようにしたい、ということで楽器は一つまでということにして作りました。


ーー本音は?

合唱曲ぽいピアノ伴奏でのソロボーカルアレンジしゅきぃ……


お絵描きするの楽しいぃいいい!!!

ーー「つむぎうた」については曲だけでなく、動画も作られていますよね。これはすべてご自身で描かれたのですか?

:そうですね。曲を仮歌まで入れて羽澄さんへお渡しした後、自分で絵コンテ書いて2~3カ月くらいかけてイラスト全部描いて、動画も編集しました。


ーーろくにイラストを描く技術もないのに大変でしたね……。

:余計なお世話だ。


ーーなぜそこまでしようと思ったのですか?

:前述のようにこの曲のテーマには創作やその思いを繋いでいくということがあります。それをより多くの人に第三者としてではなく自分事として受け取ってもらえるといいなと思いました。自分でも絵や物語を書いてみたい、声をあてたり歌を歌ったりしてみたい、と。そのときに僕自身が第三者みたいな立場は嫌だなと思ったんです。


ーー自分で麻薬を使っていない売人が売ってくる麻薬は信用できない、みたいなことですね。

:それはどちらにしろ信じるな。


ーー販売者自身が使い手になっているマルチ商法は強い、みたいなことですね。

:喩えが悪い。


ーー何にせよ、自分でイラストも描くことで「あなたも自分の『世界』を描いてみませんか」と促しているわけですね。

:そうですね。今の時代、イラストにしても何にしてもプロのクオリティと遜色ないものがたくさん溢れていて、それ自体は素晴らしいことなんですが、早々に打ちのめされて自分の才能に見切りをつけてしまう人も多いかと思います。見切り自体が悪いというわけでもないんですが、子供の頃何も知らずに夢中に描いていたあなただけの「世界」があるならそれはあなたにしか描けないのだから精一杯紡いで、繋いでみませんか、ということを伝えられたらと思いました。それは今と地続きなんですよ、と。


ーー本当のところは?

iPad pro12.9インチとApple Pencilをお迎えしてProcreateでお絵描きするの楽しいぃいいい!!!


は? よすぎるんだが??

ーーそして今年2022年の2月に羽澄さんによる歌入れが行われたわけですが、実際に羽澄さんが歌われた「つむぎうた」を聴かれたときはいかがでしたか?

:もう衝撃でした。元々「羽澄さん歌ったらこんな感じになるかなあ、うふふ」的な漠然としたイメージはあったのですが、実際納品されたボーカルを聴いたとき自分が想像していた遥か上を超えて良くて、「は? よすぎるんだが??」としばらく鼓動の高鳴りが止まらず一音再生するたびに「はーっ! この声可愛すぎるんだが??」とニヤケまくって椅子に座っていられないので落ち着くまで1時間ぐらい部屋の中をぐるぐる歩き回ったり高速足踏みしていました。


ーーそれは……キモいですね。

:まあそれをしても結局あんまり収まらなかったんでミックスしながらずっと悶えてたんですけどね。

僕は茜屋日海夏さんの声も好きなので仮歌として入れていたAIきりたんバージョンもいいなあと何度も聴いていてこれでも満足感があったのですが、そこで満足せず羽澄さんへ依頼して本当に良かったなと。


ーー自分以外と組んだからこそ想定外の喜びも味わえるわけですね。

:そうですね。そしてそれと同時にこのタイミングで本当によかったなとも思いました。


ーーそれはどういうことですか?

:実は昨年のブラックフライデーのときにCubaseをArtistにアップグレードし、iZotopeの初めてのiZotope11点セットを購入してたんですよ。

CubaseをアップグレードしたのはCubaseが11からArtistでもVariAudioというピッチ補正機能を使えると知ったタイミングでCubaseが珍しく冬にセールしてたからなんですが、このVariAudioが今回大活躍しました。また、iZotopeのOzone 9の自動マスタリング機能にも今回お世話になりました。

もしこれらがなかったらこれだけいいボーカルをもらってもきちんといい音源に出来なかったかも……とも思ったので、本当このタイミングで作れてよかったなと思いました。


ーーこれまでまともにミックス・マスタリングしてませんでしたもんね。

:失敬な! してなかったんじゃなくて出来なかっただけです!


ーー今も出来ているかというと別に……。

:まあミックスとかマスタリングはまだまだ奥深くて入口に立った程度だなという気はしますが、それでもかなり満足のいくものができたなという手ごたえがあったのでよかったかなと思います。


ーーそうですね。本当に羽澄さんの歌声素晴らしかったですね。

:ねー。

ーーねー。


:次はイメージソングではないですけど、今度は羽澄さんの明るく元気でキュートな歌声のほうの魅力を活かせるような曲も今ちまちまと作っているのでそれも楽しみにしていただけたらと思います。


ーー楽しみ~。

:まあ頑張るのはあなたですけど。


ーー唐突にマジレス~。

:それまでは是非「つむぎうた」や羽澄さんの他のお歌とかを聴いていただければと思います。個人的には今回の話の中で挙がった曲は勿論「愛言葉Ⅲ」とか「アイの庭」とか特にオススメです。あと羽澄さんは単純に喋ってるだけで可愛いです。


ーーアイに溢れていますね。では、本日はここまでということでお疲れさまでした、私。

:お疲れさまでした、私。